午前中にTLに流れて来た
マニアのみならず自衛隊関係者でも『.50口径の対人使用はハーグ陸戦協定的にはアウトだけど、装備に対しての使用だから許される』って言ってる人がいるけど、根拠はなんだろうね?
という話。
これについては自分自身「そういうものなのだろう」として特に出典をあたる事がなかったのだが、少し気になったので調べてみた。
僕は英語にも法学にも詳しい訳ではない。それでも、Googleに適当な検索ワードを入れてみた所、ずいぶんと「らしい」ものが出て来たので、以下に紹介する。
今回見つけたのは、アメリカ陸軍法務総監部発行の「Law of War Deskbook」(「戦争法規事典」とでもいうべきだろうか)の2010年版。全ページの含まれたPDFへのリンクは参考文献として記事の末尾に掲載したので、気になる人は見て欲しい。
問題の.50口径の使用についての記述は、ハーグ陸戦条約規則22条ならびに23条(戦争では使用する兵器について、制限があるべきだとする条項)に関連して、米軍が用いる各種の武器、兵器について説明する流れの中に見つかった。
とはいえ、わずか4行があったのみ。
そのパラグラフを以下に全文引用する。
d. Sniper rifles, .50 caliber machine guns, and shotguns. Much mythology exists about the lawfulness of these weapon systems. Bottom line: they are lawful weapons, although rules of engagement (policy and tactics) may limit their use.(Law of War Deskbook,P.143)
d. スナイパーライフル、.50口径の機関銃ならびに散弾銃。これらのウェポンシステムの合法性についてはさまざまな「神話」が存在する。だが、これらのウェポンシステムはROE(交戦規則)によって用途が制限されている限りにおいて合法である、という以上の事は言えない。(戦争法規事典、143ページ/kwn訳)
「ROE次第で合法になり得る」という大変に濁された記述であるが、この記述が「対物だから合法」論の根拠になっているという可能性は、かなり高いと思われる。(なお、散弾銃も.50口径と同列に扱われている事にも注目したい。)
この記述だが、同じく検索でみつけた「Law of War handbook」(戦争法規ハンドブック)の2005年版でも特に変わらなかった。
大口径のいわゆる「アンチマテリアルライフル」が9.11にはじまる「対テロ戦争」のあとから注目を集めるようになったことを考えると、1990年代あるいはそれ以前に、米軍がどのように書いていたのかも見てみたい所であるが、それは、自分などよりもっと詳しい方が調べてくれると信じて、この項を締めたいと思う。
参考文献
Law of War Deskbook(2010年版)
http://www.loc.gov/rr/frd/Military_Law/pdf/LOW-Deskbook-2010.pdf
Law of War handbook(2005年版)
http://www.loc.gov/rr/frd/Military_Law/pdf/law-war-handbook-2005.pdf
(以下、11/18追記)
本件、2012年版の「Law of War Deskbook」では微妙に記述が変わっていることが判明。
以下に当該部分を引用する。
d. Sniper rifles, .50 caliber machine guns, and shotguns. Much mythology exists about the lawfulness of these weapons. At present, they are considered lawful weapons, although rules of engagement (policy and tactics) may limit their use.(Law of War Deskbook(2012 edition),P.154)
d. スナイパーライフル、.50口径の機関銃ならびに散弾銃。これらのウェポンシステムの合法性についてはさまざまな「神話」が存在する。現在、これらのウェポンシステムはROE(交戦規則)によって用途が制限されている限りにおいて合法であると見なされている。(戦争法規事典(2012年版)、154ページ/kwn訳)
「Bottom line:」 と「At present」の違いがどこまで大きいのか、だれか法律に詳しい人の解説を伺いたいところである。
なお、これらの記述の前提となっている1907年改訂版のハーグ陸戦条約では具体的な数値をあげられておらず、あくまでも「e)To employ arms, projectiles, or material calculated to cause unnecessary suffering;(article23)」として「不必要な苦痛を与える投射物はやめるべき」としか書いていない。具体的な数値を示したものとしては、ハーグ陸戦条約のもととなった1868年のペテルスブルグ宣言(400グラム以下の榴弾の禁止)などがあるようだが、その部分にはまだ詳しく突っ込めていない。ここも、だれか詳しい人の解説を求めたい所だ。
参考文献
Law of War Deskbook(2012年版)
http://www.loc.gov/rr/frd/Military_Law/pdf/LOAC-Deskbook-2012.pdf



